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あいつの正体

さて、久々に「異邦人」でも。
読んでくださっている方、お話もわからなくなっているでしょうが、今日は自分の部屋にムルソーを招待したレエモンが、自分の情婦のことを告白しているシーンです。

今回の部分で動詞のdireの訳し方が何パターンもあって面白かったので、それにも注目してみます。

Pour en venir à mon histoire, m'a-t-il dit, je me suis aperçu qu'il y avait de la tromperie.

「例のいきさつに戻れば」と彼はいった。「だまされていることに気がついたんだ」

ここでのdireは複合過去形で言ったで訳されていますね。これは辞書どおりの一般的な訳しかたですね。

madame ne travaillait pas. Mais elle me disait que c'était juste,qu'elle n'arrivait pas avec ce que je lui donnais.

あいつは働こうとしない。しかも、これではぎりぎりだ、あんたからもらうものではやってゆけない、とぬかした。

こちらでは半過去形になっているdireぬかしたと訳されています。過去にあったことで、習慣的なことはこのように半過去形で表現します。レエモンはよくこの情婦に「お金が足りない」と言われていたのが、ここからもわかります。
そして、このフレーズに見られるmadame、普通だったら敬うべき表現をあいつと訳していますね。これは皮肉を表現しているのでしょうか。

Pourtant, je lui disait : Pourquoi tu travailles pas une demi-journée ?

それでおれはいってやった。「なぜ、お前は半日でも働かないのだ。

こちらのdireも半過去形。いってやったと訳されてます。このセリフも日常茶飯事だということが活用形からわかります。

Mais elle ne travaillait pas, elle disait toujours qu'elle n'arrivait pas et c'est comme ça que je me aperçu qu'il y avait de la tromperie.

しかし、あいつは働かず、相変わらずやってゆけないといっていた。こんな具合で、何かだまされてると気づいたわけなんだ。

こちらのdireも半過去形で、ここではいっていたと訳されています。
それから先ほどもでてきたn'arrivait pasやってゆけないとここでは訳されています。これは出来ない上手くいかないと言いたいときに便利な表現です。会話ではこう言いたいときに、動詞のpouvoirで言おうとしがちなのですが、このarriverを使った表現のほうが、やわらかく自然な場合も多いです。

d'abord, je l'ai tapée. Et puis, je lui ai dit ses vérités.

おれはまず女を引っ叩いて、それから、あいつの正体をきめつけてやった。

こちらのdireは複合過去形ですね。きめつけてやったになっています。
je lui ai dit ses véritésは直訳調にすると、わたしは彼(彼女)の本質を言った、という感じかな。

Je lui ai dit que tout ce qu'elle voulait, c'était s'amuser avec sa chose.

自分のあれでたのしむこと、お前の望みはそれだけなんだ、といってやった。

こちらのdireも半過去形。いってやったと訳されています。この出来事が習慣的なことではない、ということがここからわかります。
このフレーズのなかで自分のあれ、と訳されているsa chose、名詞のchoseは話し言葉で、あれなんとか、というようにはっきりと物や人物などを言いたくないときに使います。最近の映画などでも、たまにこの表現をみつけることがあります。ぼやかしながら、逆に強調したいときに使うんでしょうね。暗示的な表現というか、日本語でもこういう言い方ってありますよね。

Comme je lui ai dit, vous comprenez, monsieur Meursault : Tu ne vois pas que le monde il est jaloux du bonheur que je te donne. Tu connaîtras plus tard le bonheur que tu avais.

「お前にはわからないんだ。世間というやつは、お前がおれから受ける幸福をうらやんでいるんだ。もうすこしたったら、お前の持っていた幸福がわかるだろうさ」とね、ムルソーさん、おれはいってやったもんだよ。

こちらのdireも複合過去ですね。いってやったもんだよと訳されています。
時制の訳し分けというのは難しいと思うのですが、日本語の前後の文を考えて不自然にならないようにすると、元の原文の時制に忠実でなくなることも多いです。これは絶対的な正解のない世界と考えて臨機応変にするのが一番のようですね。日本語ではフランス語のようにたくさん過去形にヴァリエーションがないので、変に気にすると文がおかしくなりそうなので(笑)。

文法の時制の勉強で活用うんぬんよりも、この複合過去と半過去の使い分けが最初の頃、理解に苦しみました。これは理屈をふまえた上で、いろいろなテキストに触れて少しずつ掴んでいくのがいいかと思います。
過去時制に種類があるということは、逆に考えると文章に立体的な効果を与えていて、慣れるとそれがあるために読みがわかりやくなるのですね。
話は違うかもしれませんが、日本語でも漢字は覚えるときは大変だけど、それがあることによって文を読むときにわかりやすくなったりしますよね。最初、めんどうだと思ったことも慣れると、なるほど便利に出来ているなーと感心することも多いです。男性形・女性形なども、それがあるために便利なことはいろいろあります。いずれにしてもアルファベットの国の人が漢字を覚えることに比べたら、フランス語の読み書きそのものはシンプルな面も多いです!

前のフレーズに話を戻すと、vous comprenezの部分は訳文では省かれています。これは、あなたはおわかりですね、といったように訳しても間違いではないのですが、もっと軽く、ねぇ、と念を押すような意味で会話で使われます。翻訳する場合は、だいたい訳さず省かれることが多いです。

それにしても、今日も長々と書いてしまいましたね(笑)。読むたびにいろいろ発見があって面白いです。このブログもカテゴリーがいろいろあって、こちらの更新は相変わらずゆっくりなのですが、のんびりやっていきます。 

2006年03月11日 | 「異邦人」を読む | こめんと 12件 | とらば 0件 | とっぷ

コメント

勉強になります

それに、おもしろいですね。direと複合過去と半過去に着目した点も、長かったですけど一気に読めましたよ。こういう短文理解の繰り返しが大事だなあと思いました。これからも宜しくお願いします。

2006年03月12日 / MOI #-URL【編集

なやみました

dire や se dire の訳し方は昨年のコンテストでなやみました。フランス語の過去の使い分けは日本語ではきちんと対応できないので、臨機応変に訳してしまいました。話の流れのなかで、現在で訳したところもあったし。

2006年03月12日 / oomot #aIcUnOeoURL【編集

MOIさんへ

今回の記事は一気に書きました。このカテゴリーは自分でも頭がこんごらがることがあったのですが(笑)。こうして書くことによって勉強になります。ホント、繰り返しですね!

いつもありがとうございます。

2006年03月12日 / しゃるろっと #-URL【編集

oomotさんへ

わたしも「星王子」のとき、時制を変に意識して文章のリズムの切れが悪くなった章がありました。わたしの場合、考えすぎると歯切れが悪くなるようです。

それに引き換え、師匠のリズム感にはまいりました。(そんなことを意識していないんだろうな、たぶん☆)

2006年03月12日 / しゃるろっと #-URL【編集

異邦人は睡眠中

異邦人、私の頭からすっかり抜け落ちてました。。。イカンイカン。

みみずくさんに聞いてみたところ、時制は意識してないというか、よくわかってないそうです、笑 フランス語もよくわかってないから、あんなに変テコなリズムと言葉遣いになってしまうそうです。

ってことは、あの個性を保つためには、フランス語の勉強しない方がいい!?葛藤だわ、笑

2006年03月13日 / うわばみ #-URL【編集

うわばみさんへ

おやっ、師匠★

異邦人はわたしも抜け落ちがちですよ(笑)。

でも、あのリズムはなかなか出せませんよ。っていうか、みみずくさんの天性のリズムかもしれませんよ。フランス語能力とかじゃなくて(笑)。

2006年03月13日 / しゃるろっと #-URL【編集

あら★

うれし~わ~。←すぐ調子にのる人、笑
でも、私のリズムってどんな感じなんでしょうな、人から見ると。自分ではズレてるっていうか、不協和音っていうか。面白いとしたら、そのズレ加減なのかな!?

実は、新しい翻訳コンテストにチャレンジするんです!課題図書を取り寄せてこれから始めるのですが。また大変なことになりそう、笑 今度は苦手の英訳です。

もう暫く異邦人君には寝てもらうことになりそう。そう言えば、未完成星王子も眠ってるわ。

2006年03月13日 / うわばみ #-URL【編集

コンテストか。。。

いいなー、英語はいろいろあって☆

フランス語は探しているんだけど、自分に出来そうなのがないわー。だめもとでもなんかやりたいんだけど。

それにしても楽しみですね! 今度はどんなお話かな。

2006年03月13日 / しゃるろっと #-URL【編集

どうなんでしょう?

翻訳は作品にもよりますが、外国語の能力というより、母語の感性的なものの鋭さが目立つような。どうなんでしょう?
師匠のツボはそこだったと思います。

Le Petit Prince は空想的なものがたりだったので、フランスでの(フランス語での)生活体験がない私にもほんとうにちょっとだけつかめたような感じはありましたが、いまの作家の方の日常が入っている話だったら、私にはムリだった気がします。

2006年03月13日 / oomot #aIcUnOeoURL【編集

そうでしょう

やはり日本語の感性は大事だと思います。
師匠のキャラが「王子的」だったのかも☆
ヘビというよりね(笑)。

生活体験かー。ほんといろいろな角度からの勉強や体験が必要なわけですよね。

現代の小説や、映画の和訳はちょっと例の通信講座でかじったけど、俗語など、これをそのまま日本語にして放送コード(!?)にひっかからないのか!? とか(いわゆる差別用語みたいなやつ)いろいろ気になる点が多くて、あとスラングや口語表現などは訳すのが難しいですね。ダサダサになったりして(笑)。

それから考えると「星の王子さま」はかなり素直に訳せたような。くりしぇさんはあまり悩まずホイホイやってました☆

2006年03月14日 / しゃるろっと #-URL【編集

くしゃみが。。。と思ったら、噂されてたのね、笑 なんて。今日は花粉が多かったわ~。

ワタクシ、英語やフランス語は今一なんですが、日本語は独特の感性を持ってるかな~って思っちゃってます、苦笑 本を読むのが大好きで、図書館荒らしと噂されていたほど。。。笑

確かに、「星王子」だから伸び伸び出来たのかな。シンプルに書いてある分、自分で色をつけて行間にも幅をもたせられるし。絵本的な要素がありますよね。

私も俗っぽい小説だったら、ここまで自分のカラーは出せなかったと思います。

図書館荒らしと言えば、学校と地域の図書館のファンタジー系は小学生の時、読破した覚えがあります、笑 やっぱ王子的ですね。

でも私の文章はマニアックだから、一部にしか受けないかな;本にするなら素直に訳したくりしぇさんと、リズムとスタイルが心地よいoomotさんかな、やっぱ。

2006年03月15日 / う #-URL【編集

絵本というよりもミュージカルの要素を感じたりして♪

現代の小説でも面白そうな気はしますが。そんなマニアックでもないですよ。ホールデンだし(笑)。

そういえば、あのPJはどうしたんでしょう。忘れられかけていないか☆

2006年03月15日 / しゃる #-URL【編集

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