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一言もかわさなかったこの一夜のために

さ、「異邦人」を読みます。ママンのお通夜の描写はもう少し続きます。ママンの友人の女が泣き出します・・・

Elle reniflait beaucoup.

女はひどく鼻をすすった。

鼻をすするにあたる動詞reniflerは、ふんふんと鼻を鳴らす不平を言う匂いを嗅ぐ嗅ぎつける、という意味もあります。
フランスの習慣やマナーについて、わたしが留学して最初に驚いたのが、フランスでは鼻をすするということがとてもだらしがないということ。日本ではよく風邪をひいたときなど鼻がグスグスいってしまうときもそんなに周りの人は気にしませんよね。ところがフランスではかなりいけない行為らしいです。その反対にブーブー鼻をかむのはOKらしい。これ、すごくきれいな女性もブーブー音をたてて鼻をかんでいます。最初それを見たときはかなりひきました。でもそれが普通らしいのですよ。食事のときにも音をたてない人たちなのに、鼻をかむときはすごい勢いでかんでいます(笑)。

Elle s'est tue enfin.

が、やがて、それもとうとう聞こえなくなった。

この部分はみごとな訳です。直訳すると、とうとう彼女はうんざりした、という感じでしょうか。ここを誤って訳すると、彼女はついに自殺した、にもなりかねません。そうすると、だいぶお話が変わってしまいます(笑)。

さて、ムルソーはどんな心持だったのでしょうか・・・

A présent c'était le silence de tous ces gens qui m'ėtait pénible.

今となると、これらのひとたちの沈黙が、私を苦しませた。

形容詞pénibleは、苦しい辛い痛ましい我慢ならない耐え難い不快な、など言葉のレベルとしてもかなり辛い心境を表現できる形容詞です。ここでのムルソーは強い精神的疲労を訴えています。

Ensuite, je ne sais plus.

それ以後のことは、もう覚えてない。

je ne sais plusを、もう覚えてない、と訳しています。動詞savoirは一般的には知っているできるといった意味なので、これはちょっと大胆な訳ですね。

やがてお通夜も終わり老人たちは席を立ちました。ムルソーは彼らを見てこう思います・・・

Cette veille incommode leur avait fait des visages de cendre.

このやっかいな通夜のために灰色の顔をしていた。

ここで、やっかいなにあたるincommodeは書き言葉や古い言い回しで、厄介な、のほかに、不快な窮屈なといった意味があります。普通、話し言葉では、使いにくい不便なといったところでしょう。

老人たちが部屋を出て行くとき、一人残らずムルソーに握手していくので彼は驚きます。そしてこう例えています・・・

comme si cette nuit où nous n'avions pas échangé un mot avait accru notre intimité.

まるで、一言もかわさなかったこの一夜のために、われわれの親しみが増したかのように。

ここで使われている動詞échanger交し合う、という意味ですね。この後ろに複数のbaiserを付ければ、キスを交わす、複数のcoupを付ければ殴りあう、複数のidéeを付ければ、意見を交換する、という表現になります。

うーん。つっこみをどんどん入れたいところだけど、窪田啓作の訳には隙がありませんねぇ。この作品に関しては原文と日本語訳のイメージのギャップというものをあまり感じないのですよ。「星の王子さま」みたいにこの作品が新訳になることはないんでしょうねぇ。きっと。。。

はじけたムルソーも個人的には見てみたいような気はするけど(笑)。

2005年09月03日 | 「異邦人」を読む | こめんと 4件 | とらば 0件 | とっぷ

コメント

enfin

先生!「Elle s'est tue enfin. やがて、それもとうとう聞こえなくなった。」で使われているenfinは、その前後のElle reniflaitという半過去、enfin(それがやっと~)、A présent 、Ensuiteという具合に時間の推移を表現するために使われている副詞ですが(ですよね?)、私は、会話のつなぎとしてしばしば使われるenfin(やれやれ、まったく、というか…など)の使われ方が好きです。とても人間的な感じがして。私自身はフランス人とフランス語でコミュニケーションをとったことが無いので、例えば映画の脚本の一部を読んだり、会話例をテキストで見てそう思ったのですが、実際にもしばしば使われるのですか?またほかに、会話で頻繁に使われるこういった言葉の例も教えていただけたらうれしいです。

2005年09月03日 / オルサ #-URL編集

タブー

フランスでは鼻グズグズがタブーでブーブーかむのはオッケーなんですか。面白いですね。フランス映画祭行った時に観察してみよ~っと。
ちなみに欧米(英語圏全部かは知りませんが)ではくしゃみが失礼にあたります。前にいた会社は英語圏の人が多くて、くしゃみしながら「excuse me」って言ってました、みんな。それが苦しそうなんですよ、すごく、笑
「excuse me」はくしゃみの後でもいいのにな~って思ってました。
そんでもって英語ペラペラのおじさま(日本人)がいて、彼もくしゃみしながら「失礼」って言ってました。習慣までうつっちゃったんですね、笑
あっ、こういうネタこそbizarreに書けばいいのか…しまった。

2005年09月03日 / uwabami #-URL【編集

オルサさんへ

副詞のenfinは「d'abord」「ensuite」などと一緒に物事を展開させる(順序づける)ときや、「要するに」「結局」という感じで物事の結論をつけるとき。あとは「やっと」「とうとう」「ついに」といった感じで物事の成就を表したりしますが、会話ではオルサさんの言うところの<いらだち>や<あきらめ>を間接的に表す言葉となります。「やれやれ」っていうニュアンスかな。
よくフランス人が言う似たような言葉(擬音)に「ouf」があるけど、これは<いらだち>というよりは<安堵>を表します。「ふぅ」みたいな感じです。この「ouf」は実は次にアップされる「星の王子」の章にも出てくるけど、内藤濯はなんと「ウフッ」って訳しているのですよ! それもいいおじさんの言うセリフで! それこそオカマだー!! これは誤訳だって、わたしも思ってしまった(笑)。

<いらだち>を間接的に表現するときにフランス人はやたらに「mais」を連発するような気がします。これは訳するときには「しかし」とか「でも」にはしないで、やり過ごしたりすることが多くて、日本語には反映しにくいけど。。。「mais enfin」って言ったらかなりイライラしていると思いますよ(笑)。

2005年09月03日 / しゃるろっと #-URL【編集

uwabamiさんへ

フランスでは鼻をグスグスしている人は「野蛮人」扱いだって(笑)。ホント、洒落にならないくらい嫌がられます。これは欧米ではだいたいそうだって聞いたことあります。あと、くしゃみをすると「A tes souhaits」(願いがかないますようにってふざけたニュアンス)と言われます。これは嫌味な感じはしません。
フランス人って風邪をひいてもマスクをする人っていないなぁ。日本人の場合、人にうつさないようにって心遣いで付けるんだろうけど、フランス人にはそういう発想ないみたいです(笑)。「人にうつさない様につける」って説明したら、フランス人が「日本人って優しいんだな」って感動していたって話を聞いたことあります(笑)。 
あと、フランスにちょっといただけで身についてしまった困った習慣、わたしにもいろいろあります。だから、普段、普通の日本人が全く気にも留めないようなことで、カッとしたりしてますよん。困ったものです~。

2005年09月03日 / しゃるろっと #-URL【編集

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