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沈黙と熱気とのさなかに

さて、異邦人を読んでいきましょう。
今日の場面もアルジェの郊外の浜辺。アラビア人に刃物で切りつけられてしまったレエモンが、まわりが止めるのも聞かずに、再びムルソーと一緒に浜辺に散歩に出かけます。そして、そこでまた例のアラビア人たちと会ってしまいます。浜辺で彼らはみつめあいます。

そのときの情景はこう表現されています。

Pendant tout ce temps, il n'y a plus eu que le soleil et ce silence, avec le petit bruit de la source et les trois notes.

こうしているあいだ、ここには、太陽と、泉のせせらぎと葦笛の三つの音を含むこの沈黙とのほかには、何一つなかった。

やはり、窪田啓作の訳は美しいですね。le petit bruitせせらぎになってます。
そしてわたしが注目したのはこのles trois notes 、 この名詞noteを和仏で引くと、すぐににはたどり着けなかったのですが、これは調子トーンってところですね。
そういえば、香水の香りを表すのに「トップノート」とか「ミドルノート」とか「ラストノート」って言いますね。なぜ、ノート? ってふっと謎に思っていたことが、ひとつ解けたような気がしました。

レエモンがムルソーにこう言います。

Je le descends?

やるか?

動詞のdescendreを使っているので、くだけた表現で撃つか? という感じですね。

興奮してきたレエモンに対してムルソーは冷静にこう言います。

Ça ferait vilain de tirer comme ça.

このまま撃ち倒すのは、きたないな

意外と訳する上で難しいのが、よく見かけるこのcomme ça ここではこのままにあたる部分ですね。和仏にはもちろんこういう訳は載ってません。前回話題になったので、また思い出してしまいましたが、ジェーン・バーキンの曲で「Ç'est comme ça」というタイトルの曲があるのですが、鳥取絹子は「そんなもの」と訳してます。

そして、相変わらず彼らをとりまく情景は動かないままです。

On a encore entendu le petit bruit d'eau et de flûte au cœur du silence et de la chaleur.

沈黙と熱気とのさなかに、相変わらず、水と笛とのひびきが、かすかに聞こえていた。

・・・もう、なにも言うことはありません。この静止した世界の中心でこれから起きる事件へと、物語はじりじりと進んでいくのです。

2005年06月14日 | 「異邦人」を読む | こめんと 0件 | とらば 0件 | とっぷ

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